善福寺の家(託児所)

写真:イワタユタカ

受賞
WOODONE空間デザインアワード2023 ウッドワン賞
掲載誌
[新]建築設計資料04 地域シェア型保育施設

竣工年  :2020年
所在地  :東京都杉並区善福寺
用途   :託児所
構造   :木造2階建
延床面積 :93.51㎡ (28.2坪)
設計期間 :2019年1月〜8月
工事期間 :2019年9月〜2020年3月
構造設計 :mono 森永信行
施工   :株式会社江中建設

『窓』 古賀春江
沢山な窓のある家、
一つ一つの窓から顔が出てゐる。
顔には地図が描いてある。
みんなの地図が読める、
鳥籠も描いてある、花もあり、コップも、望遠鏡も、並ぶ顔、水筒、
霧、黎明とパイプも確実につながつてお互の陰翳を持つてゐる。
痙攣する避雷針の窓からまた一つの顔を見ないか、
揺れる、揺れる、椅子が、星が、
黒い夜の絵具は沈黙して語らない――その後の顔等に就いては。
今はただ明るく揺れる顔がある。

隔てつつ繋げる
絵や詩から喚起されるイメージ。この建築にある6つの部屋を〈隔てつつ繋げている〉吹抜けは、まるで窓が本来持っている外と内を〈隔てつつ繋げている〉役割そのもののようだ。
そしてこの小さな空間にその吹抜けがふたつもあることによって、窓の数は必要以上に増える。さらにそれを過剰に楽しむかのように、押入れの扉も必要以上に扉だらけだ。
詩の最後「黒い夜の絵具は沈黙して語らない」という一節は、皆が帰ってしまった夜の託児所で遊具や絵本が戯れるイタズラな妄想をかき立ててくれた。そのために建築は、遊具と絵本と椅子と棚と扉と建具と手すりと、、が切れ目なくつながっていなくてはならなかった。