写真:嘉納愛夏
掲載誌
2017 『スロウ vol.50』
2011 『住宅建築』4月号―特集 生きつづけている場所で―
2008 『Replan vol.81』
2008 『スロウ vol.15』
竣工年 :2007年
所在地 :北海道川上郡標茶町
用途 :住宅
構成 :夫婦+子ども2人(両親と同居予定)
構造 :木造平屋建て
敷地面積 :367.98㎡ 111.09坪
延床面積 :111.17㎡ 33.56坪
設計期間 :2006年6月〜2007年3月
工事期間 :2007年4月〜2007年8月
施工 :有限会社 桂田工務店
「シペッチャ」はアイヌ語で「大きな川のほとり」という意味。敷地は北海道の東端、標茶町市街の南、釧路川に向かって緩やかな斜面が続く丘陵地に位置する。朝日から夕日まで楽しめる環境に恵まれた敷地である。北海道の長い冬と短い夏の暮らしを楽しめるよう、温かくかつ開かれた住まいが求められた。小さく住まうことと、明暗や広狭、高低、開閉などのやわらかい多様性のある空間を心がけた。
木造平屋の単純な切妻屋根は、桁高をGL+2400までおさえて3寸勾配とした。寒冷地の厳しい気候から建物を守るために、断面も平面もきわめて単純でコンパクトなかたちにしている。
平面は単純な凸型をしている。通常の必要生活諸室を凹型に納めた上で、土間を差し込んで凸型の必要かつ十分な暮らしのかたちが生まれている。
凹型の北側に両親、南側に息子夫婦、その間に子供室を配し、土間がそれら必要生活諸室と二世帯家族をつないでいる。土間は、内玄関、来客者の応接、プレイルーム、長い冬の外部的空間ともなり、もう一つの暮らしの中心となる。凸型の二つの入り隅を土間への出入口にして、南北の抜けをつくることで、小さな開口部でも室内に十分な明るさと広がりをもたらしている。
光と風と人がゆき交う内部土間が、二世帯家族のつかず離れずの関係をつくっている。
建物全体に温度ムラのない温かな環境をつくるため、温風ダクトによる躯体蓄熱式の床暖房を採用した。建物を高断熱にして土間スラブに蓄熱することによって、床温度は20度前後でも室内は十分に温まることがわかった。北海道内でも極寒の地標茶において、アイヌのトイチセにならった輻射熱による温かな室内環境が生まれた。これによって、間仕切(建具)の少ないセミオープンなプランが実現している。