主に1950年代に執筆された物理学者のエッセイ集だが、内容は一般向けに書かれたものが多い。
キリンのまだら模様と田んぼの表面のひび割れが似ていること、次にガラスの割れ方、ものの壊れ方、終いには近路(ちかみち)の法則なんかにも生真面目に話がふくらんでいく様子は、近しいものを感じる割れ目の特集号なのです。
では、もし非常に一様で均一な物があったらどうなるか、どこも同じなんだから割れも切れもしないだろう、もし割れるとしたらきっと霧のように散ってしまうだろう、とかいう議論がギリシア時代にあったという話も興味深い。
さてこのように割れ目という着眼を得ることで、世の中にある様々な現象を同じ皿の上にのせて考えているというところが面白い。この素朴な疑問が科学の出発点だろうし、建築や都市を考えるときにもいつも使っている思考方法だろうと思う。たとえば補助線を引く等。
数学者のポアンカレは、「数学とは異なるものを同じものと見なす技術である」と言い残しているが、まさに本著はその思考の出発点だ。(2018.12.31)